Hermit Crab | 安齋萌実+水野寛子
本文56ページ, 210mm×112.5mm
ビス止め製本

2023年に制作された、水野寛子のアニメーション作品『Hermit Crab』を製本版として再構成しました。

水野 寛子:「人間の帰巣本能」をテーマに制作した『Hermit Crab』の作中では、とある男性と女性が会話をしています。男性は6年前に住んでいたアパートのことや、アパートの大家である夫婦のことを思い出します。短い期間で引越しを繰り返した私は、自身のことを”ヤドカリのようだ”と思い、この作品の制作を始めました。また、結婚を機に「私にとって”今”しか作ることのできない作品はどんなものだろう?」と考え、二度と戻ってくることはない家や感情を、作品として残しておきたいと思いました。

安齋 萌実:「家」という空間は、単に「雨風を防ぐためのもの」ではありません。その空間には、住む(住んでいた)人、その周りの人…と、さまざまな人が関わっています。そして「家」と関わる個人たちは、些細で記録にも残らない「家」の記憶をそれぞれ持っているのです。今回の製本版『Hermit Crab』では、アニメーションとは異なる「紙をめくる面白さ」や「手元で見る感覚」を楽しんでいただけたらと思います。